映画鑑定士と顔のない依頼人──七十一点

スカッとした度、六点。謎が氷解していくところでなるほど、となる感が素敵だ。ユージュアルサスペクツ観る時間があるならこれを観よう。

もう一度観たい度、七点。ちゃんと伏線が張り巡らされているのでもう一度観ても耐えられる作りになっている。すでにパスポートのシーンを観直したい。

映像、六点。潔癖な爺さんの雰囲気を余すことなく伝える映像美。フィルムの質感が良い。

ストーリー、七点。潔癖の爺さんの心がどんどん変わっていく穏やかなフューマンドラマと油断させといてエゲツない展開に持ち込む。爺さんの恋愛劇なのに、ここまで嫌にならずに観られるのは女優の力が大きい。見た目、微妙な謎、危うさの演出によるものだろう。

高揚感、七点。話が常にプラスに働くようになっていて、初め停滞していたと思ったらどんどん発展していき、そして最後に大マイナスという展開の持って行き方が良い。高揚感をずっとキープしてくれる。

丁寧さ、八点。不要な部分がほぼない、計算され尽くした内容。

斬新さ、七点。ヒューマンドラマだと思わせてこういう展開、教養のようなものもついた気になれるし、上層階級の世界が垣間見れる気がする。あまり観たことのない世界観だ。しかしそれが全てないと成立しない不思議な構成。

情熱、七点。明確にこういうものを描くという強い意志を感じる。エンターテイメントとしてとても好感が持てる。終盤のインタビューで爺さんが答える内容は作品と製作者の叫びとして受け取った。

演出、八点。どんどん足し算で良くなっていく感じと、その足し算が引き算になるかもと思わせる女の危うさ、そういう駆け引きでグイグイ観させてくれる。

心に残る度、八点。総合的にかなり高い品質の映画かつ、ストーリーが美しくもエグいので、少しだけ残された希望にすがる感じ。誰もがどこかで同じような絶望とかすかな希望を持ったことがあると思うが、それを物凄く上手く伝えてくる。心には間違いなく残るだろう。

以上、合計七十一点。「どんな贋作の中にも多少の真実が紛れ込む」終盤で爺さんがいう言葉だ。それが茶化されるような形でカラクリ人形に吹き込まれるが、この言葉に縛られて、爺さんは警察に行くのをためらう。かすかな希望を無残にも抱いて結局精神が崩壊するまで待つことになる。凄い映画だ。

1/08/2016 07:39:00 AM